Picoti-Picota

地面に、散らばるエサ、つつけ、つつけ、ツンツンと

正しくない恋の着地点とは

場合によっては醜悪に感じられるだろう話。

 

好きな人がいる。

その人と話を10分もすれば、3日は幸せでいられるから多分好きなんだと思う。

 

その人とは、叶うならもっと親しくなりたいし、恋をしたいし、その先も考えるような関係になりたい。

だけどまあ、無理かな。と思っている。

 

その人も私に対してある程度好意的でいてくれるのは、私に対する言動からわかるけれど。

それが彼個人の気持ちの現れなのか、仕事だからなのか、わからない。

私は彼のクライアントだから。

ハードルがこれだけだったら、もう少し諦め悪く足掻けるだろう。

ハードルその2、10歳年下。

ハードルその3、既婚者(+子)。

 

世の中にはこれでもなお、略奪せんとがんばれる女性もいるだろう。

私にはその熱量がない。

出会うのが遅かったことを、私が生まれるのが早すぎたことを、少し悔やんで現状に甘んじることを選ぶ。

 

私は彼のクライアントだけど、ビジネスの現場においては彼が上だ。

先生と生徒という感じね。

だから、彼はどこか私に対して対等であり導こうという気持ちがあるし、私は彼に従おうという気持ちがある。

これが精神的に年齢差を埋めてしまったのがいけなかったんだろうな。

 

あとは好きになるのに理由はいらない。一目惚れはしていない。

ただ、長い日々重ねたこの人いいなあ、の積み重ねでしかない。

 

妻子から彼を奪うということはつまりどういうこのなのか、と考えると、それは結局セックスをする関係になるということだ。

セックスをして2人の距離が0センチになって、燃えて焦がれてどこかでしくじって何かがこじれて面倒なことになって彼は家庭に戻り私は一人取り残され気まずくなればビジネス関係も終了だ。

 

私が望むのはそれなのか?と自問自答する。

そのためにあの手この手で彼の心と体を一時的にものにすることの意義はなんなんだ?

そこにある幸せとか愛とかって、なんなんだ?

 

だったら、一定の間隔で彼に会い、どうってことない会話を交わして、彼が笑い、私も笑い、今日も話せて嬉しかったなって思う。よきビジネスパートナーとして過ごす。

願わくば、彼も私と話をしてそれなりに楽しかったな、と思ってくれたらなおいい。

その関係が漫然と続き、私はいつか他の人に出会って、彼への気持ちを日に日に薄れさせていく。

いつか、10歳も年下の若者に一喜一憂してた時もあったな、なんて懐かしく思う。

 

私の心はその方がずっと幸せな気がする。

 

偶然だけれど、先日、彼の妻子を見た。

その日私は彼の職場に行ってたのだけど、彼の車が駐車場にないことに気づいていた。

だけど彼は職場にいた。

私が帰る時、私の車の後ろに駐車しようとする車があった。彼の車だった。

あれ?と思ってバックミラーをみると、運転席には女性がいた。そして後部座席から顔をのぞかせているのは、2歳ぐらいの女の子だった。

「子どもが生まれたらしい」と人づてに最近聞いたけれど、もうこんなに大きかったんだ、と驚いた。

きっと、妻が車を使う用事があって、代わりに彼を職場へ送り迎えする手はずだったんだろう。

当然、妻は私のことなど知らない。

 

見てはいけないものを見た気がしたし、体中の血が一瞬止まってしまったような気がした。

その後、これから三人で家路に着くんだ。もしかしたら途中でスーパーなんか寄って買い物とかしたりするのかもしれない。

そう考えると、泣きたくなった。

不倫をしているわけでもないのに、自分が惨めになった。

何より吐き気がしたのは、自分自身の思考にだ。

妻の顔をみた瞬間思ったのは、「なんだ、私よりブスじゃん」。

認めろよ、負けを。

あんたは選ばれていない、その時点であんたは負けてるんだよ。ブスかどうかじゃないんだよ。

 

ああ私には無理だ、と同時に悟った。

仮に二人で逢瀬をして、彼が帰っていく場所にあの二人が待っている。

円満な家庭だろうが、冷えきった夫婦関係だろうが、関係ない。

彼の帰る場所がそこにある。その事実に、私は耐えられないと思った。

私は彼と恋などしたくないと思った。

私の恋に、彼以外の人間の存在はいらない。

 

私の恋心はただ宙ぶらりんでフワフワと、答えを求めず、軟着陸できるまで惰性で落ちていけばいい。

 

後日、彼に会った時も私は変わらず笑って話をした。

「こないだ、奥さんと子どもみちゃったよ」

そんなことはもちろん言わない。

その代わり、彼に心のなかで問い続ける。

 

ねえ、どうして結婚してること黙ってるの?

いつまで黙ってるつもりなの?

あなたが隠してさえいなければ、好きにならずにすんだのに。

 

私の正しくない恋の着地点は、彼の顔面にお見舞いするドロップキックかもしれないね。