Picoti-Picota

地面に、散らばるエサ、つつけ、つつけ、ツンツンと

正しい恋の決着点について

私はやさしい男によくフラれる。

 

今より何年か前にも、私は好きな人がいた。

その人に出会ったのはもう8年ぐらいは前なのかな。

合コンで知り合って、なんだかいいなあと思った。

だけど連絡先を交換したぐらいで、その後すぐに会うことはなかった。

1年か2年かして、一度連絡がきて飲みに行った。

そのさらに1年か2年して、ひょんなことで連絡が復活して、また飲みに行った。

その時に初めて2人で会ったけれど、いいなあって改めて思った。

 

その間には、2つほど恋愛を経ていたけど、どこかでずっとひっかかっていた人だった。

少しがんばってみようかと、私にしては積極的に誘ったりして、結構頻繁に会うこと半年。夏にはドライブまでした。

互いに30代も半ばというのに、だからこそなのか、男女関係は発展せず。

相手が明らかに脈なしなら諦めもつくのだけど、妙に好意的でもあったりで判断がつかない。「俺は受け身だから」と何度も言われた。

正直、なんだそりゃ、と思ったりもした。

もやもやしながら、いい加減答えを出さないとなと考えて「この日に」と決めて、誘った。

だけど、会う前日に「友だちも呼びたい」と言われて、私の心は一気に萎えた。

「お好きにどうぞ」

その日を最後に、私は彼を誘うのをやめた。

 

それでも、彼のことがどうでもいいとなったわけじゃなくて、たまに無性に会いたくなる。私たちの間には何もないけれど、時々頭をなでてもらったり手をつないでくれる、それがついつい恋しくなる。

それで連絡をして、ただ酒を飲み、他愛のない話をして、夜中に街を歩き回り、少し親密な距離感を味わって、さようならする。

また半年とか1年とか会わない。

 

これを私はいつまで続けるんだ、と今年になっていよいよ反省した。

本当に好きな人はもう別にできてしまったけど、私はどこかで彼の存在を滑り止めにしている。

うら寂しい時、逃げ道にしている。

だからダメなんだ。

 

本来なら、もう連絡をしないで会わなければいいのだけど、そこは私も弱いので「これが最後」ともう一度会う手はずを整えた。

 

いつも通り会って、下品でろくでもない話をして、酒を飲み、酔っ払って街を歩き、ベンチで休み、コンビニに寄り、彼の車についていった。

何かを企んでいたわけじゃないけど、もう少しだけ一緒にいたいなと思って、今までで一番甘えてしまった。

 

好きな人のことを、どうしようもなく好きなんだと気づいた時に、外側から既婚者であり子持ちであることを知らされた後だったし、それ以外にも気が滅入ることが多くて、少し肩を借りたかった。

結局借りたのは肩だけにとどまらず、今まで決して超えなかった一線を超えてしまった。

 

なんでそんなことを言ったのか、私もわからない。

言わなかったら、友人同士が一晩火遊びをしてみただけ、という形でお互いに「あはは、なんかごめんね」で済んだのに。

 

「ずっと好きだったんだよ」

 

今思い出しても自分をぶん殴りたくなる。

言った瞬間、まずい、言い方間違えた、と思った。

「今は別にそうでもないんだけど」と付け加えるのを忘れた。

とはいえ、行為の最中にそんな補足説明はそれこそ情緒がない。

私は情緒を大事にすることにした。

 

翌朝、ほんのりと気まずい気持ちのまま、別れた。

私はこれ以上連絡する気がなくて、このままさよならでもいいかな、と思った。

なんというか、最後に味見できたしまあいいか、ぐらいの気持ちだった。

告白しちゃった!みたいな焦りとか不安とか高揚はなく、そのあたりはやっぱりもう、私にとって彼は終わってしまった恋なのだなあと感慨深い。

 

でもその夜に、彼からLINEがきた。「今から会えない?」

え、やばい、どうしよう。

とりあえず、会った。

そしたら、フラれた。

 

「好きって言ってもらえて、本当に嬉しかった。でも、今、他に気になる子がいてさ・・・ごめん」

 

1日かけて、私とその子とどちらを選ぶか、猛烈に悩んでくれたらしい。

その子とやらがいなければ、付き合ってくれていたっぽかった。

昨晩の甘えと告白をあと2年ぐらい早くできてれば、今頃婚姻届でも出してたのだろうか。

いや、いずれにしても、私は彼とは付き合えない運命だった気がする。

 

全然へっちゃらだよ、という顔をするのも違う気がするし、悲しむにもショックが少なくて、えーと、うん。

「あなたのことはずっと好きだったんだけど、会わない間に好きな人がほかにもできてしまったから、大丈夫」

と、よくわからない返事をした。

そして、今回で会うのを最後にしようと思ってたとも伝えた。

だから安心してね、もう追いかけたりしないよ。

 

彼が会って話したいと言ってきたとき、私は何かを期待したんだろうか。

「付き合おう」と言われたら、付き合ったのかな。よくわからない。

半々、というのが正直なところだったし、フラれて「やっぱりな」と思うと同時に少しホッとした。

すぐに答えを出そうとするのは、やさしい男性によくあることだ。

「きちんと答えを出すことが誠意」とか思ってる男だ。

それは実のところ、「自分の厄介ごとを手早く片付けて楽になりたい」だけなんだよ、女の人はそこまで見えてるよ。

 

途中まで送ってくれようとしたのを辞退して、じゃ、さよなら。と手を振って、歩いた。

彼がいつまでも私を眺めていたのか、すぐに踵を返したのかは知らない。

だけど、私はこういう時は振り返らない。

 

安心してね、私はつよいの。

男にフラれたときは、ぜったいにすがらないって決めてるの。

そうやって、恋には決着をつけるの。

そういうアピールをする。 

 

最後にやさしい人でいてくれてありがとう。

ちゃんと会って話したかった、とつまらない綺麗事を言ってくれたおかげで、私はあなたに幻滅することができました。

未練なく、堂々とかっこよく立ち去ることができました。